2008年11月26日

サイコフィクション





12月に、僕がストーリーから監督とプロデュース、特殊メークからデジタル合成、編集から音楽まで手がけたショートフィルム"Boy In The Box"のDVDが発売される。この作品はホラーでは無い。まだ確立されていないファンタジー映画の新ジャンル"PSYCHO-FICTION"(サイコフィクション)の輝かしき初作品なのである。

ではその"PSYCHO-FICTION"とはいったいどういうジャンルなのだろうか?簡単に説明してみよう。




サイコフィクションとは:
抽象的で個人的な精神分析的シンボリズムや無意識による夢や超常現象、メインに脳内宇宙に存在するコンプレックスや精神異常(狂気)等が誘発する不条理現象をコンセプトとして構築された娯楽作品.サイコフィクションにおいては、奇抜な発想の不条理表現に於いて、手法がどれだけ斬新で実験的であっても逆に古典的であってもその方法論に制約は無い。しかし抽象映像表現のみではアートフィルムに成ってしまう。 従って重要なポイントは、コンセプトがどれだけ抽象的であっても、それを観客が理解し楽しめる物語として、納得の行く筋立てを持たせる事でアートでありながら娯楽作品として成立させた作品であることが必要なのである。

先程、僕の作品"Boy In The Box"が"PSYCHO-FICTION"(サイコフィクション)の初作品であると書いたが、それはこのジャンルそのものが出来てから最初に製作されたという意味であって、既にたくさんのサイコフィクション作品は制作されている。ただそれらは、「ホラー」として、また「サイコミステリー」という名で分類されたり、「ミニシアター」とか「アートハウス」という、芸術性の高さ故にそれが娯楽作品であってもアートフィルムとしてカテゴライズされていたのである。

では何故それらのジャンルのままではいけないのか?「ジャンル」というのは観客の先入観そのものであるからで、全てのカテゴリーの中から選択する基準となるモノである。従って観客の作品批評基準は、選んだジャンルによって著しく異なる。
例えば「ホラー」を観る時は、評価の基準が「どれ位怖かったか?」というポイントに集結する。そこに、本来サイコフィクションのコンセプトを持った作品(幻想や不可思議なイメージをシンボルとして構成されたドラマ)を「ホラー作品」と勘違いして鑑賞すると、
「あまり怖く無かった」という判断で作品として評価が低くなるのである。

では、僕が「素晴らしいサイコフィクション作品だ。」と思う作品を少し紹介しよう。

まず1作目は、「ローマン・ポランスキー」の「THE TENANT(テナント)」である。(この作品については前回ブログを参照のこと)
2作目は「FATAL ATTRACTION(危険な情事)」を監督した「エイドリアン・ライン」の作品で「JACOB'S LADDER(ジェーコブズ・ラダー)」。この作品こそ、ホラーとして宣伝されてしまったことで、その内容の持つメッセージやシンボリズムの深さが理解されなかった悲運の名作なのである。
http://jp.youtube.com/watch?v=I0kW6xuxtPU&feature=related
http://jp.youtube.com/watch?v=SXXbIOc9h4g&feature=related
http://jp.youtube.com/watch?v=bdqPXx38Ogw&feature=related

3作目は「エル・トポ」を制作したアートフィルム作家「アレハンドロ・ホドロフスキー」の最もコマーシャルな作品「SANTA SANGRE(サンタ・サングレ)」。これほど屈折した内容でありながら、なおかつ大きな感動をもたらせてくれる作品は、他に無いのではないかと思える名作である。
http://jp.youtube.com/watch?v=8fW-yWpfxCk&feature=related
(次の映像はエヴァネッセンスの曲であって、オリジナルのサウンドとは無関係。)
http://jp.youtube.com/watch?v=NrOl6o9zJPU&feature=related

4作目は、最もたくさんのサイコフィクション作品を制作している「デイビッド・クロノンバーグ」の「VIDEODROME(ビデオドローム)」。あのリック・ベーカーが特殊メークを担当した名作である。
http://jp.youtube.com/watch?v=Ytp69fBh0J8&NR=1

5作目は、イギリスのクラシックロックバンド"The Who"のロックオペラ「TOMMY」を映画化した巨匠「ケン・ラッセル」のハリウッド作品「ALTERED STATES(アルタードステーツ)」。この作品では、特殊メークの神様と言われるディック・スミスが担当、とにかく幻覚シーンが素晴らしい。
http://jp.youtube.com/watch?v=MbYT3UclhNY
http://jp.youtube.com/watch?v=LTqFXfn3kdo&feature=related
http://jp.youtube.com/watch?v=mdGOBqKPhq4&feature=related
http://jp.youtube.com/watch?v=KpW1O8iOTqE&feature=related

さて、巨匠による名作を紹介した後で自らのショートフィルムを同ジャンルとして発表するのは少しおこがましいのだが、何事にも始まりがあるという事で理解して貰うとして、僕の作品"BOY IN THE BOX"について説明しよう。

気薄な記憶しか持たない箱の中の少年ジョージが、小さな鍵穴から覗いた視点によるシンボリックでシュールなアメリカン・ホームコメディーが展開される。突如悲惨なイメージがフラッシュしてくる事に異常な胸騒ぎを覚えたジョージは、流体になる事で箱の外側に
出る事に成功する。そこで彼が目にしたのは、何と荒廃した家の中を走り回る目玉達であった。これはジョージが一つ、また一つと目玉を捕えては飲み込む事により、一人一人の家族の視点を体験し、家族に起こった悲劇の謎を発見してゆく物語である。

この作品は2003年アメリカ映画として製作され、夕張ファンタスティック映画祭では日本語のサブタイトル(字幕)付きで上映した。原語ヴァージョンを観て貰えば解ると思うが、テンポの早い台詞自体がシュールなこの作品は字幕を読んでもすぐに意味が理解出来ない
為、じっくりと映像を楽しめないという問題点があり、吹き替え版を製作する事に決めた。まず、前半のホームコメディーがもともとシュールな台詞なので、直訳ではなくベースは守りながら日本語のニュアンスで面白い台詞に変換する事に決め、「ワハハ本舗」の若手
芸人に標準語での吹き替えをやって貰った。さらに、関西人で「いちびり」の僕(マッド・ジョージ)は、よりえげつないギャグを導
入した関西弁の吹き替えをする事に決め、「ぼんちおさむ」さんの協力を得てますますシュールで下品で柄の悪い作品となった。(笑)

DVDではオリジナル英語版と標準語、関西弁の吹き替えバージョン、それに本編と同尺のメーキング映像を収録、さらに16ページカラーブックレット"PSYCHO-FICTION"付きで書店でも販売予定。
http://jp.youtube.com/watch?v=WkmGKt6j_6w

もし、この「サイコフィクション」というジャンルで作品(映画、漫画、小説、パフォーマンス、etc.)を制作したい人、もう制作している人がおられるならば、是非とも集結してこの新しいムーヴメントを活性化していこうではありませんか!
  

Posted by スクリーミング・マッド・ジョージ at 00:17Comments(10)TrackBack(0)

2008年10月05日

テナント:恐怖を借りた男”(1976)

「シュール娯楽曼荼羅」の初回にふさわしい作品として「テナント」という映画を紹介します。
これは「ローズマリーの赤ちゃん」や「戦場のピアニスト」を監督した「ローマン・ポランスキー」の76年作品である。
最近の洋画はMTVの出現から全体的にペースが非常に早くなっている。
今のテンポに慣れている若い洋画ファンにとっては少しスローに感じるかも知れない作品だが、シチュエーションの不気味さと随所に現れるシンボリックなカットは作品を深く堪能する者にとってはたまらなくぞくぞくする映像である。
ストーリーは:
パリのアパートの1室を借りに来たタルコフスキー(ポランスキー本人)は前の住人「シモーン」が飛び降り自殺を謀り、入院していることを知る。彼はシモーンを見舞いに行くと彼を見たシモーンは叫び出し、そこに見舞いに来ていた友人ステラ(イザベラ・アジャンニ)と共に病院を追い出され二人は親交を深める。
アパートに引っ越してきたタルコフスキーは管理人から日常生活に於いて異常な静寂を要求され、他の住人とも「音」の事で問題に成る。ある晩シモーンのドレスが入ったクローゼットを移動した時、壁に穴が開いているのを発見、そこからコットンに包まれた前歯を見つける。それから彼の部屋から見える共同トイレで長時間じっと立ち尽くす住民やら、窓から侵入しようとする手等被害妄想が広がって行き、無意識のままメークをしたりドレスを着ている自分に気づいた彼は周囲の者(友人と成ったステラを含む)が自分をシモーンに仕立て上げようと企んでいると断定し、凄惨なクライマックスを迎える。

この作品は日本では劇場未公開である。いったいこれはどういう事なのだろうか?
一つ前の作品「ローズマリーの赤ちゃん」は大ヒットしたにも関わらずだ!
「チャイナタウン」や「ローズマリーの赤ちゃん」も素晴らしい映画であるが、この作品はそれらを遥に上回る最高傑作である。
ここにyoutubeでアップされているいくつかのシーンがあるのでチェックしてみよう。
http://jp.youtube.com/watch?v=FwTwJreDSDI&NR=1
http://jp.youtube.com/watch?v=acVTOXnkYEE
http://jp.youtube.com/watch?v=npCoV1Je5Ao&feature=related
どうです?面白そうでしょう。しかし日本ではまだDVDが出ていないのです!
誰か、このDVDを発売して下さい。

ちなみにこの作品にはサイコロジカル・サスペンス・スリラーというカテゴリーを与えられている。
現在、のカテゴリーとしては最も的確なジャンルに思えるが、これこそ私が提唱している新ジャンル「サイコフィクション」として一般に認知されてしかるべき作品なのである。

次回はその「サイコフィクション」の定義、またそのジャンルの広がりについて書いてみようと思います。
  

Posted by スクリーミング・マッド・ジョージ at 15:17Comments(0)TrackBack(0)

2008年09月29日

マッド・ジョージの「シュール娯楽過激芸術マンダラ」

サルバドール・ダリやアレハンドロ・ホドロフスキー、山上たつひこから丸尾末広、デビッド・リンチにちゃんばらトリオ、スリップノットにラムシュタイン、特殊メークと人形アニメ、ヤン・シュワンクマイケルとHRギーガ―、ジョエル・ピーター・ウイトキンにクリス・カニンガム、マークライデンから松本人志、そして三上寛にヒエロニムス・ボッシュ等のシュール娯楽過激アートの優れた作品群は一般民間人に理解され難く、情報が少ない分その存在すら知られていないものが多い。
不条理と異形、グロテスク、異常性癖、下品さ、恐怖と笑い、差別感や暴力等、
超自我にコントロールされることで抑圧された我々の持つ様々な欲望。
モラルというバリアによって隠すことで膨張してゆく禁欲感。小さなきっかけで爆発することで現実社会に於ける利己主義的犯罪(無差別殺人や強姦、窃盗等)が起きる事が多々ある。
芸術とは自由表現であり、自我の発散の場である。アーティストはおもしろいと思えるものを100%表現することで一般の禁欲している人々に捌け口を与え、社会の崩壊から救っている。それには「社会的モラル」によって自由を制限するべきではない。
毎日の生活で当たり前の時間が過ぎてゆく。普通に仕事をして、普通にランチを食し、定時には電車に乗って帰宅。夕食を家族と食する時間、テレビを観て風呂に入り1日を終え、睡眠に入る。当然人間関係の不和や金銭面の問題などネガティヴでストレスフルな時間が心の中で活性化され、人々はその捌け口を求める。
「娯楽」とは反ストレスの勇者となって、社会に迷惑を掛ける「ストレス爆弾」を沈静させる一つの有力なデバイスである。
我々はアクション・ムービーを観て、ヒーローに成りきり悪を退治することでストレスを発散させる。コメディー(お笑い)によって暗く偏った精神を明るくポジティブな方向性に導いてくれる。ミステリーやホラー・ムービーでは現実に遭遇したくないスリルを疑似体験したり、現在自分の置かれているネガティヴな状況よりももっと酷いシチュエーションを持つキャラクターを観ることで優越感をおぼえ、自分の気持ちが楽になる。
幻想芸術はありきたりな日常から身体的に危害が加わらないセーフティーゾーンに身を置きながら、ありえない別世界を擬似体感させてくれる。そこはありとあらゆるタブーやモラルを超越した世界であり、文学的な謎解きも楽しめる現実逃避の避難場所だ。
我々は現実社会の中で平和を維持する為に秩序とモラル、社会的責任を全員が1個人として他の個人を束縛しないように優しさと理解を持って接し無ければいけない。しかし我々は人間という生物であって、その心には優しさや愛があれば憎しみや残酷性を伴う悪も共存している。それは自然界の法則として言うところの光があれば影がある。光だけの存在も影だけの存在も在り得ない。この世は全て表裏一体であるということだ。
世界中の人々が全員善人になることは物理的に不可能なことだが、ネガティヴィティーをコントロールする方法論として一つの提案がある。それは現実世界ではポジティヴな社会や秩序を守り、助け合いの精神で人間関係をキープさせ、虚構世界に全てのネガティヴィティーを導入しそこに制限を掛けないことだ。
これから書きますはトータルメディア・アーティスト(特殊メーク、映画監督、イラストレーター、彫刻家、デザイナー、パフォーマー、ミュージシャン、etc.)であるスクリーミング・マッド・ジョージの個人趣味的評価による極上質カルト作品とその作者の紹介、体制に媚びない個性の大曼荼羅! どうぞお楽しみに!
  
Posted by スクリーミング・マッド・ジョージ at 12:36Comments(2)TrackBack(0)
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